しかしその不可能なクロスボーダー・アービトラージを可能にするのが、今回の孫正義のスキームである。まずソフトバンク傘下の電力を大量に消費するデータセンターなどを韓国に移し、そこで大量の電気を韓国で買う。一方で、日本ではメガソーラー発電施設を建造し、極めて高い電気を地域独占の半官半民の電力会社に好きなだけ売る。これによって、日本海の国境を渡って韓国から日本に電気を運ぶことなく、実質的に韓国で買った電気を、極めて高い値段で日本国民に売りさばくことが可能になる。この時の電力価格差が大きければ大きいほど、孫正義の利益も大きくなる。日本の電気代を釣り上げられるだけ釣り上げることが目的なら、孫正義の今までの行動も全て説明できる。放射能の恐怖を煽ったこと、橋下徹の心にあのアイデアを植えつけたこと、そして菅直人の心に侵入したこと・・・
(中略)
僕は、職業柄か、生まれ持ってかはわからないが、合法的に鮮やかに大金を抜き取るスキームを考えつく人間を、思わず尊敬してしまうところがある。自分が、そのスキームで損失を被る側の人間だとしても、だ。このクロスボーダー電力アービトラージで、確かに割高な電気を買わされるのは、日本の居住者である僕だ。そういう意味では、僕も孫正義に毟られる側の人間だ。大勢の毟られる人間。しかしだからこそ、このスキームがいっそう魅惑的に思えてしまう。この感情は説明するのが難しいけれども、自分が弄ばれるとわかっていても、そんな男を何度も愛してしまう女性の感情みたいなものを思い浮かべてもらえば、わかってもらえるだろうか。
僕は孫正義のことを「ハゲ」といったことを悔やんだ。彼は最初から全てを見通していた。恐るべき知性でもってこのスキームを完成させようとしている。さすがに一代で世界的なテレコミュニケーション・カンパニーを作り上げた男だ。ハゲはハゲでも、超一流のハゲタカだ。