今後、TPP交渉で各国首脳が論議し始めると、おそらく彼らは「どうしてこんな低レベルのことを話し合わなくてはならないのだ」と愕然とするのではないか。つまりそれほど現状のTPPは曖昧なものであり、基本的な認識のすり合わせからスタートしなければならないのである。
したがって私は、「どうしてこの程度のものに対して大騒ぎで論争しなければならないのか」と不思議に思う。街頭に繰り出す議員たちの顔には、オバマ大統領と同じように「票が欲しい!」と書いてあるようで痛々しい。
私は過去40年間、日米貿易戦争ともいうべきものをつぶさに見てきた。相手国に門戸を開かせた後、米国がきちんとフォローして輸出を拡大した試しがないことをよくよく承知している。米国が開けた扉から入ってくるのは、いつも中国や韓国などの企業である。
日本が法外に高い関税を課しているコンニャクやコメなども安いに越したことはないが、それでも「販売価格が高いから」という理由で食べない、ということもない。
政治家があれだけ無理をして関税および非関税障壁を敷いて国内産業をガッチリ守ってくれているのだが、そういう産業はおしなべて衰退している。これまた日米共に同じ結果になっているという笑えない話である。
私の経験から言えることは、おそらく日米がTPPに参加したところで状況は何も大きく変わることはないだろう。日本は依然として巨大な政府債務を抱えたままだろうし、米国では雇用も経済も、そして世界市場しか見ない米国のグローバル企業の習性も、変わることはないだろう。
TPP交渉は実体が不明のまま推移するだろうし、米国でさえも選挙の結果によっては熱が冷めるかも知れない。つまり、「賞味期限のある政治テーマ」ということだ。
どちらにしても、わめき散らすほどの問題ではないし、国論を二分する価値があるテーマとも思えない。